スピード感
やはりスピード感は大事にしていきたい。その日に収録したものをその日に出すというのは不可能ではないんですね。必要となったらもっと速いこともできると思っていますが、実際に自分たちで編集をするようになりましたので、せっかくやるのであれば、紙媒体ではできないこと、他の同じ様なことをやっている人たちがいたら、彼らができないことをやるのが自分たちの役割かなとは思っています。
地方発
先ほど(収録前に)地方の話が出ましたけれども、最初から結構、地方・都市で何ができるか?といういうのが[建築系ラジオ]の一つのテーマになってまして、そもそもコアメンバーの中に必ず地方を拠点にする人が入っているんですよね。当初であれば山田幸司さんもそうですし、五十嵐太郎さんも東北が拠点ですし。今だと倉方俊輔さんも九州を拠点にされている。彼は東京にもよく来てますけど。北川啓介さんも東京にはしょっちゅう来るけど名古屋をベースにしている。僕もそもそも金沢出身で、時々金沢へよく行っています。そこで何か、なかなか表に発信できないような、そもそも(地方は発信する)機会も多くはないし、そんな声を取り上げて発信したい。つまり地方発ですね。それも地方から東京を経てもう一回地方へというかたちではなくて、地方から別の地方へ、地方から地方へという流れができてくれば、それは僕たちがやりたかった情報発信、情報受信の一つのやり方ではないかと思っています。
空気感とノイズ
もう一つは、なにかこう空気感みたいなものを音声に伝えられればいいかなと思っています。音声であることによって、例えば間の取り方とか、それから笑い声みたいなものとか、「こたつ問題」の時に問題にもなってたんですが、文字にしにくいものっていっぱいあると思うんですよね。それを伝えたい。今こうやって映像を撮っていただいてるみたいに映像という手段もあるんじゃないかと、前に一度、「建築系TV」というものを実験的にやったんですよ。USTREAMの配信を使って。でも、当初から解っていたんですが、映像って目の前で観ないといけないですよね。画面の目の前で。それは忙しい建築関係者がなかなかとっつき難いんじゃないかと。だから通勤通学で聞ける、作業しながら聞ける音声という形式をどちらかというとベースにしています。
音声の可能性については当初から考えてはいました。そもそも[建築系ラジオ]を始めたのは、最初の話に戻りますが、きっかけがもう一つあって、今の学生達、僕から見ても下の世代の人がそんなに本を読んでいないね、みたいな話があったんです。それで学生が面白いと思って聞いてくれているかもしれない。
それから意図的かどうかわかりませんけど、僕らは「ノイズ」を入れているんです。ある種のノイズを入れていて、別に聞いていてすごく聞きやすいBGM的な音楽としてやっているわけではない。せっかくやるのであれば、多少は「なんでこんなの流すの」と思われても、実は当初から方向性は変わっていませんが、僕らは僕らである種の実験をやっていて、今までのメディア、他のメディアでできなかったことをいかに組み込んでいくかを、ある種の[建築系ラジオ]のアイデンティティとしても持っていると思うんですよね。少なくとも僕はそういう風に考えています。必ずしも全てが良くできていて、聞いて満足してもらうためにやっているわけでは決してなくて、僕らは僕らの実験をやっていて、そこに興味を持ってくれれば良いですし、時たま「こたつ問題」とか「出会い系カフェ問題」とか、ある種の人々が「これは聞きたくはないや」っていうものもあるとは思うんです。でもそれは最初から全部聞いてもらう必要は無いと思っていて、まぁ全部聞くのも大変ですけどね。多様な可能性をコンテンツの中に入れておいて、そこから面白くないものはそれこそ淘汰されて無くなっていくでしょうし。聞く人の側も自分が気に入ったものから聞いてもらえれば良いかなと。そうは言っても全てのコンテンツはそれぞれ関連しているとは思います。同じ様なメンバーでやっているので、でも、表と裏じゃないけど、両方ありますよと。でもそれがある種の、建築界に生きる僕たちが縮図でもあると思うんですよね。
全体としては、建築界において幾つかのメディアが存在しているということは、多様にもなっていくわけですよね。それはそれで悪いことではない。
情報を発信するということ
情報発信が簡単になったことの弊害について考えているところはありまして、例えば、今は(ネットで)簡単に自分の意見が発信できる。それは書籍になるわけでもない。例えば雑誌に署名原稿として何かが載るというのは、ある種のハードルがあると思うんですよね。恒久的に。それに対して、例えばブログとかツイッターとかミクシィとか、そういうところで自分の意見をすぐに書けることは、それはそれで良いとは思いつつも、本になる文章を書くことに比べたら簡単じゃないと思うんですよ。それなりに違いはあると思います。もちろんブログの中にもすごく面白い文章はたくさんありますが。でも簡単に何かを発信できるからといって、即、それが社会に接続しているという回路になるとは限らないと思う。逆に、発信する人が多くなってくれば、相対的にはポジションが小さくなるわけだから。その中で、誰もができるけれども、自分はどうするかっていう、自分の固有性みたいなもの、自分の持っているメディアの固有性みたいなものを高めていくということがとても大事だと思います。だからこそ僕らは、少なくとも僕は、できる限り、[建築系ラジオ]という名前は割と一般的ですけれど、他でやっていないことを取り入れてやっていこうと思ってます。時々僕も叩かれたり、怒られたりするんですけれども(笑)、まぁ身を持ってやって、痛みは痛みとして受け取って、失敗したら失敗したで本当に申し訳ないと思いつつ、できるだけ自分が痛くなって他の人に迷惑かけなければ、それはそれで一つのかたちだと思っているので、そういうかたちででも前進したいなと思ってます。
なにか安定したところに[建築系ラジオ]がいく、とは僕はあまり考えていません。ある程度のところまで発展したとしても、例えば「お酒飲みながらの収録はそろそろ辞めた方がいいんじゃないですか」と言われても、一方でお酒をやめたコンテンツを流しつつ、お酒を飲みつつやっぱりやるっていうのもあると思うんですよ(笑)。それは申し訳ないことですが、大人になりきらない、みたいなところをやっていくのも大事かなと。いつまでも。そう、思ってます。 |