入試に関しては、僕らの頃と今と、変わらないものもあるし、変わってきたものもあるんです。基本的に変わらないのは藝大の試験が一次、二次と二度あって、今学科はセンター試験で4科目、今度5科目にするかもしれませんが、得点と、それから点数だけで切れないものですから、空間考査っていう試験をするんです。それはだいたいどんなものかっていうと、立体とか空間的なことに対して適応能力がどれくらいあるかっていうこと。昔は幾何学っていうのがあったでしょ。それだけでこの頃、幾何学をやってきてない人がいっぱいいるんだよね。数学的なこととかね。それは余談になるけど全般的に高校の数学から外れてきているのは僕は反対なんです。それとどれくらいの学科のグレードにするかっていうのがあります。それと今言った空間考査でやって、そっちで図形とか立体的な問題・考え方をどれくらい解けるか、っていうのがやっぱり一つあります。そして更にそれを午前中だけの試験なんですが、鉛筆デッサンで描かせるわけですね。ちなみに問題の大半は解いた立体を出題の方向性によって各自画面の中に構成して光をあてて描く。更に透明とか不透明とか素材を指定する場合もありますね。それを描きます。だから初めて現役で受ける人にとってみると、ちょっと全く経験してないことがいくつか入る。だからといって全然描けないわけじゃない。でも基本的に浪人をして、もしくは現役でも受験のための対策を練ってきた人は、前の問題も情報公開されてますから、どんな問題が出るかっていう中で、ちょっとトレーニングしてくれば出来ない訳ではない。でもあとは上手いか下手かっていうのはあります。センスがいいか悪いか。それと学科との合成点です。
実は僕らの頃の受験生は30倍だったんです。今は、10倍以下です。今年なんかは15人とるのに100人です。10倍きってるわけです。それでその最初の試験で約半数の50-60人に絞って、次に造形の試験と建築写生の試験と二つあります。二日間あります。これが結構、学生にとって体力を必要とすることで、造形の試験っていうのは、ある素材とか条件がいくつか与えられて、それによって造るわけです。今年は実はフラフープと片面ダンボールみたいな材料で、ある横幅1m以上の立体を造るわけです。9時スタートしてお昼休みとりますけど夕方4時くらいまでの間に全部自分で工作して造る。ところがテーブルに着地しちゃいけないとか、土台になるコンクリートブロックには接着はいけないとか。今度の場合、接着はいいのかな。といっても着かないですよ、だいたいね。要するにバランスをとらないと壊れちゃうわけ。それからコンクリートブロックとかそういうのの凹んだり、平らな方どっちか使うんですが、そこにどうやって咬ませて、かつフラフープって滑りますから、それをどういう立体でかかえるか、っていうのとかを、構想力として練らなきゃならない。感心するくらい上手い人もいるし、チャレンジして失敗する人もいるし、無難にやってる人もいるし、ずっと浪人長くやってトレーニングしてるからいつもワンパターンしか持ってないってわかるような人もいるし、そういう中で、やっぱりその試験なりのランキングを決めていくわけですね、A、B、Cランキング。大抵壊れて立ち上がらなかった人はその場でダメだね。
その次の日に、丁度おとといでしたけど、風の強い日でしたけど、基本的に外で写生させる。雨が降ると大学の石工室とかそういうとこで写生をさせるわけです。もうわかっちゃうから言いますけど、こないだ代々木の体育館だったんです。温度低くて寒かったけど、そこで朝から夕方まで描くわけです。それでやっぱり見て、A、B、C、Dとランキングして、なかなかAプラAなんてとる人はいないんですよね。写生の方はだいたい基本的にはトレーニングして練習してる人間の方がやっぱり上手く描けますね。してない人は、丹下さんのオリンピックなんて捩れてるから結構難しいんですよ。それとか遠近感が描けなかったり、いろいろありますね。それとか後は建築物だと表面だけ描く人と、例えば人体デッサンでもそうなんですけが、中の骨を理解してその表面を描いてる人と、それから単純に表だけ描いてる人と両方いるわけです。上手ければどっちでもいんです。でも建築物になってくると、出てる形とそれがカーブして流れてどこへ連続してるかとか、全体がどういうもので捩れてるのか、シンメトリーなのか、スパンも綺麗に並んでるのか、段々に縮んでってるのかとか、そういうモノが持っている元々の基本的な形の理解できる人と出来ない人は随分違うね。それでもって、やっぱり合計点でとるんです。そういう試験をやるわけです。
いつも毎年この試験の方式でいいのかどうかっていうのは、結構教員が議論するわけ。ただ長い間それに似た様な建築写生とか立体の能力をみながら入れてくるということを藝大の伝統としてやってきました。ただこの頃どこの大学でも受験生が減ってるから出来るだけ受け易くしようっていう考えがある。受け易くするには物事を省略していくってことが一番簡単なんですよ。でもその省略の仕方があんまり省略すると「どこでもいいじゃない」っていう風になるわけ。一つはある全体の総合能力の高い人間をとりたいんだけど、もう一つは絶対東大なんかには受からないけど、ひょっとしたら藝大なら受かるかもしれないという能力も無いことも無いんです。やっぱり建築が好きで、そういうことを解くのが非常に能力のある子とか、センスがあるのっていうのはたまさかいるわけね。そういうのにやっぱり僕ら門戸を開くべきではないかと。そうじゃなければ東大と同じ試験やって、ランキングの低いのをとればいいじゃないかと。やっぱり藝大は藝大らしいとり方をしてもいいじゃないか、っていうのは基本的な中身であるわけです。ただ時代が変わってったらどうなるかわからないよね。ただその時は藝大そのもを無くせばいいじゃないかっていう風にも言ってるんだけど、そういう風に今のところ試験をやってます。
更に昔は面接があったんですね。今は面接が必要か必要でないか、っていう議論も盛んになされてます。基本的には面接やりたい、っていうのは本音ではありますね。ただ周りから「何のために面接するんですか」って、「面接でとるとらない決まるんですか」っていうそういう質問に対して答えようがないわけですね。ただやっぱりヒヤリングは重要で、何かモノを造るときの意欲とか、造ったものを自分で説明が出来るかとか、コミュニケーションがどうやってとれるかとか、それはやっぱり建築やるのに、僕らは相当重要だっていう風に思ってます。 |